2021年6月26日土曜日

Oriolus「Isabellae」音質レビュー~鮮度の高い音が魅力~

 ちょっと時間が経ってしまいましたが、前回の開封編レビューに続き、Oriolus「Isabellae」の音質編レビューです。
Oriolus「Isabellae」
Oriolus「Isabellae」

いつもの再生環境であるUD-505が修理に旅立っていたため、時間が空いてしまいましたが、
Oriolus「Isabellae」の使用&音質編レビューを書いていこうと思います。

先に良い点ともう少しという点について私的な結論を簡単に書いておくと
  • 良い点:音の鮮度&リアリティ
  • もう少し:空間の再現性&音場感、音の空間的拡がり
という感じでしょうか。






■Oriolus「Isabellae」の音質レビュー

音の鮮度の高さは結構目を見張るものがあると思います。
鮮度が高く一音一音のリアリティや実在感を感じられるイヤホンです。

低域はしっかり沈み、高域はキラキラと輝きます。発せられる音の一粒一粒には立体感があり
個人的には非常に好きです。
高域の輝きや伸びやかさという点は私が所持しているイヤホンの中でもかなり高いレベルという印象です。
このように低域及び高域の存在感が強いわけですが、このイヤホンの素晴らしいところは
だからと言って中域の存在が相対的に薄くなってしまうこともなく、
例えばボーカルが埋もれるということがなくて、適切な存在感を発揮してくれます。
近しい価格帯で且つ低域/高域のインパクトが強いNobleAudio「M3」なんかは相対的な
中域の薄さが感じられ、ボーカルが引っ込んで聴こえてしまったりするのですが、
このイヤホンに関してはそういったことがありません。
この帯域バランス=鮮度の高さでは決してないでしょうが、きっと一因ではある気がします。

「どの帯域も主張します(できます)よ。でも下品な派手さになったり、うるさくなったり、
ゴチャついて一音一音の独立性が犠牲になったりはしませんよ」

ということで長年かけたドライバーやチューニングの素性の良さが感じられます。
oriolus「isabellae」
ドライバーはダイナミック1発



また、全体的に線にしっかりとした太さがありどっしりとした安定感があります。
この太さがあるがゆえに音の質感みたいなものが把握しやすく、この点も鮮度に貢献してくれて
いるのではないかという気がしています。

若干ドライな音色ですが、ドライすぎません。音色をドライに振ることで輪郭を強調したり、
解像感を演出できたりする印象を持っていて、チューニングの一つの方法なのかと
勝手に思っています。
ビジュアル領域で例えれば画像に「シャープ」をかけることで、像をはっきりさせようとする
行為とイメージが近いでしょうか。が、このIsabellaeではそんな「演出」をしなくても成り立つ
十分な解像感があります。

あとは、基本的に音との距離が近いです。私自身はその場の空間を遠目から眺めるような
もう少し「神視点」感があった方が好きだったりしますが、近い距離で鳴らすことも
鮮度に貢献しているでしょうか。
「ボーカルを聴くのにできるだけ近くで鳴らしたい」そんな方にはマッチする気がします。

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【追記】2021/7
ボーカルがいいので、私の中のNo.1イヤホンであるHA-FW10000とボーカルを比べます。
図で表現すると

こんなイメージです。
どちらもボーカルの存在感や生々しさがあるのですが、表現方法が違うという感じでしょうか。
FW10000は太くしっかりした芯があり、その芯の存在感で重く押してくる分だけ、音全体に重さがあり、アタック感があります。
対してIsabellaeは芯があるような感じが少なく、音全体で均一に押してくる感じです。
マッサージに例えれば指でぐいぐいと押してくるFW10000と手のひら全体で押してくるIsabellaeという感じです。

IsabellaeとHEROを比較するとよりHEROのほうが薄く、Isabellaeのほうが音に濃厚さがある印象です。
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と、ここまではIsabellaeの私的なGood Pointですが、ここからはちょっと私にはハマらなかった
かなという点です。

この高鮮度の一音一音をまとめて、全体としてその空間=録音されたその場の環境、広さだったり
どこにどの楽器が配置されてという定位を表現・再現できているかという、音場表現力や定位感
という点ではちょっと物足りなかった印象です。
というか、そもそもこのイヤホンはそこを目指していないのかもしれません。
空間を再現するのではなく1つ1つの音をリアルに鮮度高く届けるんだ。そう使命を割り切っている
ような気もします。しかしその鮮度のレベルが非常に高いので、その部分を欠落させてでも
「このイヤホンには価値がある」と言えます。

目の前の空間の使い方としても少々窮屈な印象があります。

(「空間」という言葉が何度も出てきてややこしくて申し訳ないんですが、ここでいう空間は
音場表現という意味ではなく、目の前に展開されるサウンドステージの広さのことを言っています。
映像に置き換えると、目の前のテレビが20インチなのか80インチなのかということでしょうか。
20インチのテレビでも80インチのテレビでも東京ドームを映すことはできて、その広さ・大きさ
を伝えることはできます=音場表現はできますが、目の前の画面の大きさは絶対的な違いがあります。
この目の前の画面の大きさのほうについてです。)

特に横方向への広がりはあまり感じられません。
「これ以上外には音を配置させませんよ」という壁が感じられ、全体的に音の配置が中心に
寄っているような感覚があります。

■oriolus「Isabellae」その他使用感

付属のイヤーピースだと中域~高域が少し刺々しく聴こえることがありました。
開封編レビューでもこのイヤーピースを一度外した後に再装着する難しさを書きましたが、
そんなこともあって他のものに変えることをお勧めします。

ステムが太いので使えるイヤーピースは制限されてしまうのですが、
ステムが太いのです
Spiral dot++を装着

写真の「Spiral dot++」を使うと刺々しくなくなり、音の表面が滑らかになります。
そしてさらに、そもそも近くで鳴らす傾向があるイヤホンですが、さらに一歩近づいてくる印象です。
さらに1歩近づいてほしいかは人それぞれでしょうか。

ちなみに空間再現力が欲しいということであれば、当然に贔屓にしているJIJU-JETも試したのですが、
ステムの太さが合わずダメでした。無理やりねじ込めなくはなかったのですが・・
運用していくのは現実的ではないレベルの無理やり感になってしまいました。
音的にも全体的に音の線が細くなってしまってイマイチでした。


付属のケーブルは4.4ミリ5極仕様で、デザインも特徴的ということで手を出す人も結構限られる
かなという印象ですが、この高鮮度でリアリティある音は一聴の価値があります。
クラシック系を聴かれる方やLIVEもの重視の方はちょっと向かないかもしれませんが、
スタジオ録音のボーカルものなんかをよく聴かれる方にはハマる可能性があると思います。

個人的には
・高鮮度な音は好印象でインパクト大
・でも空間再現力はもう一歩
ということでMyイヤホンヒエラルキーの何番目に置こうか・・・正直悩ましいです。。


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