2022年6月25日土曜日

MUSE HiFi「POWER」音質編レビュー~エージングで結構変わる気がする平面駆動~

 先週開封編をお届けしたMUSE HiFiの平面駆動型イヤホン「POWER」。
今回はその「POWER」の使用・音質編レビューを書きたいと思います。

MUSE HiFi「POWER」





■MUSE HiFi「POWER」音質編レビュー~エージングで結構変わる気がする平面駆動~

MUSE HiFi「POWER」はMUSE HiFiの平面駆動型ドライバー(平面磁気ドライバー)を1基搭載した
イヤホンです。
比較的安価で平面駆動型を試せるということで今回購入してみた次第です。

私なりの結論を最初に書いてしまいますと
  • 同価格帯の他製品と比べてもそん色はない
  • ただ単純に音だけ比較するなら好みの問題でもあるが他選択肢もあり
  • 個人的には箱出し直後の音のほうが好きだった
  • イヤーピースがたくさん付属するが、ただの「賑やかし」ではなく、きちんと音質調整目的で付属している気がする
といったところでしょうか。
以後でなぜそう思うのか、その辺について書いていこうと思います。






■MUSE HiFi「POWER」の音質について

箱だし直後の印象は
  • ちょっと前に出すぎる部分もある気がするけれど、特に楽器物の解像感が高く、非常に鮮度が高くてエージングするのが楽しみ
  • 対してボーカルものはちょっと主張が足りないような?
でした。

が、1週間エージングしてみると、より全体的に表現が丸く、暖かで、穏やかな印象になりました。
個人的にはちょっと残念です。
あの箱だし直後のある種「カリッ」「パキッ」とした解像感と、それによる迫りくるリアリティ、
そしてピアノやバイオリンの伸びやかな中高域は好きでした。

ただ丸くなったといっても、例えば近しい価格帯で、radius「ドブルベヌメロキャトル」(の標準仕様)と
比べると、よりメリハリのあるパキッとした表現で、気持ちがいいです。
そのリケーブル済みとは比較していません。)

ヌメロキャトルのほうが「モワッ」とした分厚い空気感があります


低音の存在感は結構控えめです。
控えめではあるんですが、決して低いところが出ていないということではありません。
出てるんですが、空間の中で陣取るスペースが控え目なんです。
いつもの伝わるかわからない汚い図で恐縮ですが、音楽を聴いていて、頭の中で展開される空間の
斜め下の端っこに陣取っていて中心にあまり出てきません。


空間全体を低域で食ってしまうということがありません。
この「端に寄せる」というのは、低域の不足感は感じさせたくない。でも低域が空間全体を喰ってしまって、
支配的になり、全体的に重く暑苦しい表現にはしたくない。
そんな時の一つのソリューションなのかもしれません。

上図でも表現したつもりなのですが、端に寄せますが、端で結構上方向に低域の拡がる領域が
立ち上がってくる印象もあります。
これにより、両端に壁があり、横方向への拡がりが阻害されているような印象があります。
そしてイヤホンとしての空間表現の特性として、横への広がりはなく相対的に奥行方向への拡がりのほうが
強調される印象です。
トンネルみたいな縦長の空間の感じですね。トンネルの中のような音の響き方をするわけではありません。

中高域の押し出し感、伸びやかさは大人しくなってしまいましたが、他のイヤホンと比べると
どうなのか?というと・・・

まぁ普通

でしょうか。特別に凹んでもいませんが、グッとくる存在感もちょっとなくなってしまいました。

最初の印象として「ボーカルものは薄いような?」という印象を持った旨記載しましたが、
今は特にそうは感じません。
ただし、楽器物の主張が弱くなったことで、そう感じているという側面も多分にあるとは思います。
当初は楽器物の主張が強かったので、相対的にボーカルものが凹んで聴こえていたということですね。

尖っていたといえば尖っていて、今のほうがバランスが良くなったのかもしれませんが、反面、
このイヤホンの存在意義や特徴であり特長が薄くなってしまった気もします。

■なぜこんなにイヤーピースが付属しているんだ問題

このイヤホンはイヤーピースがたくさん付属しています。


4種類でそれぞれS、M、Lサイズが付属します。
性格の悪さが露呈しますが、パッケージ全体としてゴージャスに見せるための「賑やかし」かな
くらいに思ってました。

が、聴き比べてみると、意外と(?)音質の調整というちゃんとした目的があって付属してるんじゃないかと思ってきました。

傾向で大きく2つに分けられる気がします。


  • 奥行方向の定位感のコントラストは薄まりますが、より音像を近くで聴かせることでリアリティを出そうとする左側2種類(グレー軸にグレー傘と黄軸にグレーの傘)と
  • 奥行方向の定位の再現性がより高く、音像は全体的にちょっと離れますが、音の輪郭を締めてカッチリ感を出すことでリアリティを出す右側2種類(グレー軸に透明傘と赤軸に黒傘)
という2つです。
どちらが絶対的にいいというものではなく、好みの問題だと思います。

で、右側の2種類(グレー軸に透明傘と赤軸に黒傘)の違いとしては
  • 赤軸に黒傘のほうがより高域のスポイルを抑え、高域成分をロスなく届けることを意図している
  • ように思えます。ただ、ちょっと摩擦音が目立つ傾向があります。
  • また全体的に赤軸に黒傘のほうが線が細い表現をします。
  • 音場表現的には赤軸に黒傘のほうがより横への拡がりを抑え、奥行方向に縦長の空間表現に感じられます。
といったところでしょうか。
左側の2種類については、明らかにグレー軸にグレー傘のほうが傘部分のシリコンが柔らかいですし、
右側2種類も違いがあったので、違う音を意図しているとは思うんですが、ちょっと私の耳では
わかりませんでした。

■同価格帯でさらにもう一本。TAGO STUDIO「T3-02」とも比較してみる

先ほどradius「ドブルベヌメロキャトル」との比較を書きましたが、
さらにもう一本、TAGO STUDIO「T3-02」との比較もいってみましょう。
楽器物のリアリティとそのイヤホン自体の重量感が気に入ってるイヤホンです。

左:T3-02 中:POWER 右:ドブルベヌメロキャトル

お値段的には「POWER」よりも少しだけお高くて、37,000円前後(お店によっては40,000円をちょっと出る模様)
です。値段順で並べると

ドブルベヌメロキャトル(約30,000円) < POWER(約35,000円) < T3-02(約37,000円)

ですね。

POWERとT3-02だったら・・・私はT3-02を推します。
T3-02のほうが音の線が太くしっかりしていて、その上輪郭が流れず、より分離感&粒立ち感があるので、
音の表現が全体的に太くても、ゴチャついた感じがなくてスッキリしています。
太い表現ができるのにスッキリしているというのは、結構いいイヤホンの条件というか「あるある」だと思ってます。


まとめとして、このイヤホンがどんな方におすすめかと言われたら
  • 平面駆動型のイヤホンを試してみたい
  • 「俺のは平面駆動型なんだぞ」と言いたい
  • このデザインが好き
  • 格好いいイヤホンでモテたい
そういった方でしょうか。
もちろん音的には悪くないんです。そうなんですが特別「これじゃなきゃ」感をあまり見出せません。
「レーダーグラフにしたら綺麗な形だけど、あまり大きくないよね」という感じです。




35,000円って安くないじゃ・・・ないですか。
同じ金額を出すなら音的には上述のT3-02だったり、あとは例えば中高域の伸びというところだと
UniqueMelodyの「3D Terminator」の中古に行ってみるのもありだと思います。
このブログを書いている2022/6末時点だとちょうど35,000円くらいのようです。

「平面駆動型を試したいんだ」というのであれば、25,000円くらいで手に入る、TINHIFI「P1 MAX」
こちらは20,000円を切るお値段で手に入るLetshuoer「S12」からいってみるのもいいかもしれません。
私はどちらも聴いたことがないので、なんとも言えないところはあるのですが、
世間的な評判は悪くなそうではあります。
ただ、「POWER」「P1 MAX」「S12」、いずれが一番モテるかと言われたら、「POWER」だとは
思いますけどね。主観ですが一番格好いいと思いますので。
私はモテたいので「POWER」にしました。購入してから特にモテだした実感はありません。

この「POWER」、通販だけではなくeイヤホンさんやフジヤエービックさんと言った店舗さんでも
取り扱いがあるようですので、気になる方は一度試聴してみてくださいm(__)m

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